大人のヲタ活記録日記

年季の入ったオタクのブログ。オタ活を楽しむ日常の事、一次創作、二次創作イラストの保存、漫画の感想など。

③二次創作小説 第3話

 


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この話だけだと何のことかわからないと思います。

よろしければ1話の内容紹介見てください。

もしご興味有れば1話からどうぞ^ ^

 

会議の場で 宇髄天元


「事件を全部調べていて、共通点かもしれない事が出てきました」

甘露寺が、手書きのメモを開いて話し始める。

「車の事故が二件、刃物事件が二件、先日の飛び降り自殺。他にも事件はありますけど、少なくともこの五件に関して共通点がありました。全員が同じ施設で治験のバイトに参加しています」

「治験の内容はそれぞれ違うが、期間は一週間から一ヶ月ほど。入院を要する長期のものが多かった」

伊黒が捕捉して後を続けた。

「そこで何らかの・・・脳に影響を与えるような薬の投与があったかもしれない。ただ副作用が出てしまったという事なのか、意図的なのかはまだ断定できない」

 


向精神薬の治験で、その後数ヶ月鬱状態に悩まされたとか、ごく稀にではあるけれど治験の後自殺してしまったとか、そういう例もありますね」

「そういう事が起きても、被験者もそのリスクを承知でやるわけだから問題にはならない。この事を逆手に取って利用できる立場の者がいるとすれば・・・」

「その人間に対して、狙った行動を取らせる事ができる。そういう事だってあり得るね」

ここまで聞いていた理事長が言った。

俺もその通りだと思う。

 


「潜入捜査が早いのではないかと思う。治験のバイトには、たしか応募すれば誰でも参加できるのだったな。俺が行ってみようと思うがどうだろうか」

催涙スプレーの被害からもすっかり回復して、元気に食べ続けている煉獄が言い出した。

「やめとけ!お前に何かあったらどうする!」

叫んだ俺の声に重なるように、不死川と伊黒も同じ事を言った。

「お前が行くぐらいだったら俺が行くわ。もしヤバい薬でも、体が大きい分回りは遅いはずでしょ」

「君にそんな事はさせたくない」

「お前だったらいいのかよ!?自分の体大事にしろよ!」

「それなら、宇髄よりももっと体が大きい私が行こう」

今度は悲鳴嶼さんが言い出した。

「皆んなやめてよ。誰に何があったって悲しい事なんだから」

甘露寺がそう言ったので、一旦は会話が途切れた。

 


「あみだクジで決めたらどうだ」

冨岡が、ボソッと言ったので皆の注目が集まる。

「そんな決め方でいいわけないだろうがァ」

「私は、冨岡の言うことは間違っていないと思う。どうしても誰かが行くしか無いのなら、それで決めるのが一番問題が少ないのかもしれない」

悲鳴嶼さんまで、あみだクジに賛成してしまった。

 


「もし甘露寺に当たったら俺が行く」

「伊黒さん・・・」

「そりじゃあ意味ないでしょ。煉獄が行くなら俺が行くって言った最初に逆戻りだわ。それ言い出したら全員そうなってくる。守りたい奴は行かせたくないからね」

 


「その方法だけにこだわらずに、他の方法も考えようね。皆で考えれば何かあるはずだから。出来れば誰も危険に晒されない方がいい。せっかく持って生まれた健康な体は大事だからね」

理事長がそう言ったので、あみだクジ案は一旦保留になった。

その後も理事長が続けて話し始めたので、一言も聞き漏らすまいとする様子で全員が静かになった。

 


「最初はバラバラに見えていた事件の共通点が見えた。何者かが何らかの形で人間の脳に影響を与えているらしい。治験の場でそれが行われているかもしれないということだね。それと今日の事で、よく出来たアンドロイドの存在も分かった。人間は本来、自分の意思で考えて行動して毎日を生きて、人生を全うする。ところが、おそらく人工知能を搭載して作られた人造人間が出てきたり、元は人間だけれど脳をハッキングされて元の自分ではなくなる人間が出てきている。そういう事が行われているのは間違いないとして、目的は何かという事だけれど・・・」

理事長は、皆の顔を見ながらゆっくり話して、そこでわざと言葉を止めた。

わかる者は居るか?という問いかけかもしれない。

「支配しやすい人間を作るという事でしょうか?」

「そうだね。杏寿郎。日本を乗っ取りたい、支配したいと思っている政治家は居る」


天元が言っていた、個人情報を入れたマイクロチップを体に埋め込むという話し、それもある意味、そういった事への抵抗感をなくすという効果があるのかもしれない。ペットにマイクロチップを入れる事が義務化のようになったのは数年前だし、体への害は無いという事でその後少しずつ人間にも普及し始めた。それが便利だし安全だと思う人も多勢いるだろうね」

「データ上に集めて保管した個人情報が、悪用しようとする奴の手に渡ったら大変な事になりますね」

「それもそうだね。もう一歩先まで、日本を全て支配したいと思っている者の立場で考えれば、国民全員のデータが欲しいのだと思う。全ての情報を集めて自分の手元に置いて一括管理出来れば簡単に支配の構図は完成する」

 


俺はそこまでは、考えていなかった。

けれど理事長の言う事は筋が通っているし、確かにそうなれば支配者側が完全管理のできる社会が完成してしまう。

「そうなってしまったら、支配者側にとって気に入らない考えを持つ者や従わない者に対しては制裁を加える事も簡単だと・・・」

「そういう事になるね。海外では実際、規制に従わなかった者に対して口座を凍結するという制裁を加えた例もある」

「個人情報と銀行口座を紐付けていれば、確かに簡単にやれますね」

「個人の病歴、収入、職業、趣味趣向までデータとして保管し分析する事が出来るとなれば、犯罪を犯しそうな傾向にある者を予測逮捕するという事もできてくる」

「まだ犯罪を犯してないのに、やりそうだからって事で逮捕って・・・」

「世の中の治安の悪くなった事を理由に、他の皆様の安全のためにと言えば反対する人は少ないと思う。犯罪を犯しそうな傾向が実際にあるかどうかも、個人情報だから公開出来ないと言ってしまえば分からないままだね」

「ということは、支配者自身にとって都合の悪い人間がいれば、そういう理由をでっち上げて社会的に抹殺する事が出来ると・・・」

「そういうことになるね」

 


「ずいぶんと不穏な話しになってきましたね。鬼舞辻議員が、その事を計画している側にいるという事でしょうか?」

しばらく黙って聞いて考えていたらしい煉獄が、理事長に向かって聞いた。

「おそらくそうだろうね」

「悪どい事考えてんのは生まれ変わっても同じって事か・・・」

俺は思ったままを呟いた。

「彼らが悪でこちらが正義と思っていると、彼らの考えは理解できないかもしれない。元々善悪の定義は、時代背景や人の価値観によって真逆にも変わってしまうくらい曖昧なものだからね。彼らには彼らなりの正義があるのだと思う。支配者側が庶民をしっかりと管理する世の中が安全で素晴らしいという考えもある。庶民の側でも、それを望む者もいるかもしれない」

「少なくとも俺はそういうのは勘弁して欲しいと思います」

「俺も好きではないな」

隣に座っている煉獄も俺に同意した。

「たしかに知っててそっち選ぶんならいいけどォ。知らないうちに誘導されて気がついたらそうなってたって言うのはシャレになんねぇよなァ」

「俺も生殺与奪の権を他人に握られたくはない」

 

 

 

宇髄との話 煉獄杏寿郎

 


「自分が治験バイトに行ってみるとか、お前すぐ無茶な事考えんのな」

「君もだろう」

「お前が言うからでしょ。それだったら俺が行く方がずっとマシだわ」

「俺は、君が行く方が心配なのだが」

お互いに顔を見合わせて、どちらからともなく笑いが出た。

 


今日は仕事が終わった後、一人暮らしの宇髄のマンションに寄って二人で話している。

昼間は暑くて汗をかいたのでシャワーを使わせてもらい、着替えも借りた。

 


宇髄は俺と違って料理も上手い。

シャワーの後ビールを飲んで、その間に用意してくれていた夕食を遠慮なくご馳走になった。

今に始まったことではないが、何から何まで宇髄に甘えっぱなしだ。

「うちでも話は出来るから、たまにはこっちに来ないか?君に甘えてばかりで悪いと思う」

「いいのいいの。俺がやりたいだけだから。お前んとこ家族も居るし気使うでしょ」

「友達を連れてきても特に何も言われないとは思うが。たしかに君のところで話す方が気楽なのはそうかもしれない。ありがとう。甘えさせてもらう」

「どんどん甘えて。これでも長男気質だし俺のが年上だから」

 


「宇髄。君が俺の事を心配してくれるのは正直嬉しいし、俺達が互いに大事に思っているという事は悪いことではないと思う。本当は治験なんか誰も行かなくて済めばそれが一番いいと俺も思う」

「バイトで中に入る以外にも調べる方法はあるかもしれないし・・・忍び込むって事なら前世では得意だったからやってみるってのもありだわ」

「それなら俺も一緒に行こう」

「お前声でかいから向いてないんだけど」

「そこは気を付ける」

「・・・ちょっと待ってて。連絡来てるわ」

宇髄がスマホを取り出して何やら確認し始めた。

関係者の誰かから連絡が来たのか。

何か進展があったのかもしれない。

 


「俺達よりあいつらの方が一枚上手だったわ。胡蝶から連絡が来た。治験のバイトなんか行かなくても証拠が揃いそうだぜ」

「本当か?早いな」

「俺達があの店に集まって話してた頃から、あいつらもすでに動いてた。大人じゃない事をむしろうまく利用しやがった。なかなかやるな」

「中に入り込めたのか?」

「社会に貢献する医療の現場を、夏休みの自由研究の課題として発表したいから、その前に見学させて欲しいとか言ったらしい。胡蝶の案だな。五人全員で、学校の課題として見学に来た子供の立場で行ったらしい。たしかにそれだったら俺らが行くのと違って警戒される事もねぇわけだ。野生児みてぇな嘴平とあの髪色の我妻は微妙だけど胡蝶と竈門と時透はそこそこ真面目そうに見えるし」

「なるほど。考えたな。それで何か見つけたのか?」

「建物の中にかなり隠してる部分があるのと、あとはセキュリティの破り方。こっから先は俺達の仕事ってこと」

 


「行く時は言ってくれ。俺も行くから」

もう一度念を押しておいたら。

たしかに声が大きい事は宇髄に言われた通りだから否定はしないが・・・

俺が行って力になれる事だってあると思う。

「お前を頼りにしてるって前に言ったでしょ。あれは本音だからね。気づかれずに忍びこんで情報取ってくるのは俺の方が適性かなと思っただけ。この前理事長が襲われた時は、別に示し合わせたわけでもないのに自然とお前と二人で共闘してうまくいったし」

「相手が人間なら、確実に倒せてたな」

あの時は刃物を持った相手だったし、一人では難しかったと思う。共闘だったから倒せた。

 


「前世以来だな。君と共闘するのは。前世では君が先に柱になっていて、後から加わった俺は最初の頃君に何度も助けられた。君の剣技の軌道が美しかった事は今でも覚えている」

「かなり細かいとこまで記憶あんのね。俺もお前と共闘した事は覚えてるけど」

 


「最初思い出すのは断片的だった。今世も大学の時から君と会って、それから前世での君との接点をどんどん細かく思い出した。前世の最終決戦では俺はもうこの世にいなくて君との共闘は叶わなかったが・・・だからこそ今度は、一緒に居たいと思う。一人では無理なことでも、君と一緒ならやれる気がする」

「嬉しいね。こっちこそ頼りにしてっから。俺もお前と一緒なら何とかなる気がするわ。今は呼吸が使えるわけでもねぇし日々鍛錬してるわけでも鬼と戦ってるわけでもねぇし・・・体力は相当落ちたと思うけど」

「うちの剣道場で一緒に鍛錬でもするか?」

「遠慮しとくわ。しんどいこと苦手だから。それに前とは戦い方が違くね?体鍛えてもこの前みたいに催涙スプレーとか使われたら終わりだし」

「それはその通りだな。そういう物はこっちも使うし、人間対人間なら射撃と同じで抜くのが速い方が勝てるのだが・・・相手がアンドロイドとは想定外だったな。しかしこの前でそれも分かったから、次は同じようにやられる事はないと思う」

 

 

コーヒーを飲んで菓子を食べて、話し込んでいるうちに気がついたら夜十時を回っていた。

夕食には帰れないと言ってあるので大丈夫なのだが・・・

「遅くまで居座ってしまって済まない。ありがとう。そろそろ帰・・」

「泊まってけば?明日日曜日だし」

「いいのか?そこまで甘えてばかりではさすがに悪いと思うのだが」

「明日の朝食も作ってやるぜ。それかもしかしてお前外泊ダメとか門限とかあんの?」

「まさか。俺は二十代後半の社会人で男だぞ。中学生の千寿郎にはまだ門限があるが」

「じゃあ決まり。ちょっと狭いけど布団ぐらいあるから」

「それなら甘えることにしよう。家に連絡だけ入れておく」

 


宇髄の部屋は、奥の一部屋を寝室に使っていてベッドは置いていなかった。

クローゼットから布団を出してきて俺の分も敷いてくれた。

十階建てマンションの最上階のこの部屋は、風通しが良くて開け放った窓から入ってくる夜風が心地いい。

角部屋なのでリビングのベランダと、この寝室の両方に窓があってよく風が抜ける。

布団に横になって、間接照明の柔らかい光に照らされた部屋で、俺は完全に寛いでいる。

 


「平和だな。この年まで普通に無事に生きてきて、前世では共に鬼を狩っていた君と、のんびりこうやって話していられる。これからはそうはいかなくなるのかもしれないが、今の時間を大事にしたいと思う」

「今だけで終わるみたいな言い方やめてよ。またお前が早く死んじまうんじゃないかって心配になるし。今の世の中には鬼は居ねぇし大丈夫だとは思うけど、なんかまたこの状況だもんね・・・俺達って平和に生きられない宿命かなんか背負ってんのかも」

「だとしてもその中で心を燃やして精一杯生きるだけだ」

「ちゃんと自分も大事にしてよ」

「わかっている。君がいてくれるから、俺は大丈夫なのだろう?」

「それはその通り。任しといて。基礎体力は剣道やってるお前のが上かもだけど。その分俺は戦略でカバーするわ」

 


「何らかの人為的な影響を受けて自分を失った人間が、襲ってくる事もあるのだろうか。前世俺達が斬ってきた鬼も、元は人間だったのだからな。鬼の血を与えられて適合出来なかった者は死に、生き残った場合は自我を失い鬼になる。今起きている事も結局同じなのではないかと思う」

「そぉね。たしかに上っ面が変わっただけで、同じと言えば同じかも。鬼の血を与えんのも、何かヤバい薬を与えんのも、それをやられた人間が自我を失って他の者を襲うとすれば・・・けど今度は刀を振るって狩っていくわけじゃねぇし。元に戻す方法だってあるかもしれないでしょ」

「それはそうだな。暗い方にばかり考えてしまっていた。君と話していると希望が持てるし心が晴れる。ありがとう。宇髄」

「これからも頼むな。煉獄」

 


宇髄が居てくれるならきっと何とかなる。