大人のヲタ活記録日記

年季の入ったオタクのブログ。オタ活を楽しむ日常の事、一次創作、二次創作イラストの保存、漫画の感想など。

⑤二次創作小説 第5話

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この話だけ見ても何のことかわからないと思います。

1話の最初に内容説明書いてるので見ていただいて

もし興味あれば1話からどうぞ^ ^

幽霊と話す 宇髄天元

やっぱりまだこの辺でウロウロしてたか。

もう居ないでくれたら、それはそれで助かるかもと半分思ったけど。

居るのを確認したからには、もう覚悟を決めるしかない。

子供の頃は、よくこういう奴に話しかけたりしていたのだから。

気配や目では認識出来るのだし、話せるはず。

 


こっちが意識を合わせると、その男が振り向いた。

「なんでここにずっと居るの?」

ゆっくり近づきながら1メートル程度の距離まで詰めて、その位置から話しかけてみる。

悲鳴嶼さんも少し離れた場所から見守ってくれている。

「・・・なんでかな・・・皆んな居るのにずっと気がついてくれないし」

「ここに住んでたの?」

「この上」

「今も?」

「・・・なんか人がいっぱい集まっててそれから・・・友達とかいっぱい来てるのに話しかけても気がついてくれなくて・・・」

本当に戸惑っているような、不安げな表情になる。

ああやっぱり。自分が死んだって分かってないパターンかも。

「あのさ。もう肉体は無いみたいだから。いつまでもここに居ても皆んなには見えないし話しかけても聞こえないかも」

「・・・え?僕は何も変わってないのにどうして・・・」

「人間の本体って肉体じゃないからね。肉体は無くなっても意識はずっと存在し続ける。人は今世での経験を終えたら肉体を捨てて、意識体だけになって帰るべきところに帰る。それからまた新しい肉体に入って新しい経験が始まる。何となく分かる?」

「それって・・・僕は死んだって事?痛くも苦しくもないんだけど」

「意識体だけになれば痛くも苦しくもない。死ぬ事は肉体の終わりで今世での経験終わりなだけで、意識は死なないし次もあるからね。何も怖い事でもない。少し前のこと覚えてる?」

「・・・・会社で一週間の長期休暇があって・・割りのいいバイトがあるからって友達に誘われて行って・・・治験バイトって僕はそんなのがあるって知らなかったけど、何か新薬の効果を試すってバイトで、日に何回か薬飲んであとはゆっくりしてられるみたいで。友達はもう何回もやってて体も平気だって言ってたから・・・楽でお金もらえるならいいかなあって思って参加した」

「なるほどね。それに行って、一週間そこに居たわけ?」

「それくらい居て一日二回言われた薬飲んで・・・施設から出さえしなければあとは自由だし、ご飯も出るしシャワーもテレビもあるしスマホも触れるし・・・時々ボーッとする事はあったけど暇だからかもしれないし。他に特に副作用とかも出ないし終わって普通に帰った」

「帰ってからは?」

「・・・帰って・・・帰ってから・・・」

何か懸命に思い出そうとしているけれど出てこないらしい。

「帰ってからのことは覚えてない?」

「・・・全然記憶が出てこない。覚えてない」

 

施設に侵入する 煉獄杏寿郎


「俺達が一時間以上経っても戻らない時は、応援を呼んで欲しい」

「はい」

「あと、うまくいったとして中から出てくる時も見張りを頼むかもしれない。以上だ」

「はい。わかりました」

竈門少年が、元気よく答えてくれた。

「俺も一緒に行ってやるぞ!」

「伊之助はここで待機だよ。俺達と一緒に」

「あともう一つ言い忘れた。周辺を回って、建物周りの警備体制がどうなっているかも見ていておいて欲しい」

俺は、この事も三人に頼んでおきたかった。

今はまだ昼間で外の人通りもあるし、普通に近くを歩いているふりで見て回っても怪しまれることはないと思う。

「わかりました。お気をつけて」

「紋次郎!周りの様子見に行くぞ!付いてこい!」

「うん。分かった。行こう」

「俺達だけで行くの?ここってヤバい建物なんでしょ?なんか怖い事あったら嫌なんだけどぉ」

「大丈夫だよ。善逸。伊之助も俺も居るから。近くに無一郎君と胡蝶先輩も居るし」

「もし俺が途中で連絡する事が無ければ、一時間後ここにもう一度集まろう」

「わかりました。一時間後ですね」

 


俺と冨岡は、炭治郎達三人と分かれて建物の方へ向かった。

建物の敷地内に入るまでには正面に門があって、許可を得て入る場合はここの受付を通過しなければならない。

先日学生組が入ったのは、許可証を持っているから堂々とここからで、でもここさえ入ってしまえば中の正面玄関はフリーパスだと胡蝶が報告してくれた。

ここを通った者しか中に入れないからというので、安心しているのかもしれない。

俺達はここからは入れないから、正面の門を通らずに中に入る事を考えている。

 


「たしかこの辺りだな」

「おそらくそうだ」

こはちょうど建物の裏側で、人通りもまばらだ。

今着ているTシャツと短パンの上から、持ってきた作業着上下を着て、

帽子とマスクを付ける。

ここの清掃員の制服に似た物は、今日のためにあらかじめ用意しておいた。

バケツにダスター、洗剤の入った入れ物など、それらしい道具を鞄の中から出す。

実際は洗剤の中身はほとんど空で、出来るだけ軽くしている。

 


ここはそこそこ大きな建物で、中で働いている人数も数百人は居るようだし、それに加えて外部からの出入り業者もあって、いちいち全員の顔を覚えている者は居ないと思う。

 


胡蝶から聞いていた通り、この辺りからなら外壁を乗り越えられそうだ。

「今誰も来ていない」

「行くか」

「君が先に上がってくれ」

「すまない」

俺がブロック塀の下にしゃがんで踏み台になり、冨岡が先に上がった。

塀を越えて向こう側に降りた冨岡に、掃除用具に似せた道具を渡す。

そのあとすぐに、こちら側にロープを投げてくれる。

そのロープにつかまりながら、俺も塀を越えた。

 


敷地内に侵入し、その後建物内に入るのは、そう難しい事ではなかった。

これも聞いていた通りだ。

スタッフも出入り業者も多く、正面入り口からも常に多くの人が出入りしている。

入り口に見張りがいるわけでもなく、すれ違う人間をいちいち見ている者も居ない。

監視カメラがもし付いていたとしても、帽子を少し目深に被っていればほとんど顔も見えないし大丈夫だと思う。

正面入り口から、清掃業者のふりをして堂々と入っていくと特に怪しまれることも無かった。

 


建物の中には売店があったり食堂があったり、休憩所が設けられていたりしていて、広めの廊下の両側に部屋が並んでいる。

外からの光も入って開放感があり、清潔で病院のような作りになっている。

廊下の手すりを拭くようなふりをしながら、両側に並んでいる部屋を見る。

扉が開いている部屋もけっこうあって、ベッドや椅子に腰掛けてテレビを見ていたり、スマホを触っている人達の姿が見られた。

大部屋というのは無いようです、どこも全部個室らしい。

治験バイトの募集は、ネットを使ってやっているからだろうか。そういうものを見ない世代よりも、比較的若い年代の人が多い印象だ。

 


ここからが勝負だ。

廊下の向かい側にいる冨岡と目を合わせると、黙って頷いた。

非常ベルや緊急呼び出しボタンのある場所は、以前に胡蝶から聞いていた通りだった。

いくつかある中で、今人がいる場所は無理と判断してスルー。

 


車椅子で入れるトイレの前が、今無人だ。

中にある緊急呼び出しボタンを押して、ビィーッという音が外まで響いてくるのを聞きながら、何食わぬ顔で廊下に出る。

こっちへバタバタと人が向かってくる。

ドアの隙間に隠れてやり過ごし、皆が通り過ぎてから俺は、廊下の奥に向かって走り出した。

冨岡は俺より先に走っている。

 


ここら辺に居た人間が皆、音の方に気を取られて離れて行った。

誤作動だったとして済まされるにしても、間を置かずここにはまた誰か来るだろう。それまでの短い時間にどこまで行けるか。

廊下の突き当たりまで行き、人が来ない間に今度は電気のブレーカーを落とす。

外からの光が入って明るいエントランスと違って、光の届かそない廊下はほとんど真っ暗になった。

「このまま奥まで行くか」

先を走っていた冨岡が、追いついた俺に向かって言った。

俺は黙って頷いた。

自動ロックがかかって出られなくなる可能性もある。

それでも、ここまで見て怪しい所は無かったとなると、あとはこの奥しかない。

懐中電灯の明かりを頼りに進む。

 


一見突き当たりに見えた廊下の行き止まりは、普通のドアノブより少し下の目立たない位置に引き手が付いている。

これも聞いていた通りだった。

鍵はかかっていない。

「ここに居て見張っていて欲しい。俺が行ってくる」

「そうか。頼む」

俺は、引き手を一気に開けて中に滑り込んだ。

懐中電灯の光が廊下を照らす。

両側に部屋がある作りは、さっきまで見ていた感じと変わらない。

 


さっきと違って部屋の扉はどこも閉まっているが、鍵はかかっていなかった。

ドアノブを回すとすんなり開いたので、懐中電灯の光を向けて中を覗いてみる。

何だ!?これは・・・

思わず大声を上げそうになりながら、辛うじて言葉を飲み込んだ。

ガラスケースのような物の中に入っているのは、おそらく人間の脳。

それが数十ケースも並んでいて、部屋の中に設置された色々な機械と繋がっている。

見た目にグロテスクな光景だからというだけでなく、この場所の醸し出す雰囲気に、強烈な嫌悪を覚えた。

吐き気に耐えながらスマホのカメラを向け、この部屋の様子を写真におさめた。

部屋はまだあるのか・・・

もしかしてここと同じような部屋かずっと続いているのか?

それとももっと違うものなのか・・・

 


次の部屋には、人間の姿は無かった。

治療室か手術室か・・・?

手術台のようなベッドがあったり、病院にあるような椅子もある。

その周りを囲むように置かれた様々な機械。

機械から伸びている電極のような物は・・・会議の席だったか・・たしか誰かこういう物の事を何か言っていた気がする。

首の後ろに電極の様な物を挿して・・・脳内の情報を共有するとか・・・

もしかしてあれは・・・

時間は限られている。長くここに居るわけにはいかない。

写真だけ撮って次の部屋に進んだ。

 


・・・・?!!

ガラスケースの中にズラリと並んでいるあれは・・・人間の体!?

ザッと見ただけで数十体はある。

中に足を踏み入れ、ガラスケースに近づいてみる。

一体一体近くで見ると、腕や足が、中には首から上が付いていない体もあった。

その切断面を見れば、精巧に作られた機械だ。

一見人間に見えたが、そうではなかったらしい。

人間そっくりのこれらは、人工的に作られた物・・・アンドロイドか。

あの時、理事長を襲ったのは人間そっくりに作られたアンドロイドだった。

カメラを向けたところでスマホの着信が入った。

「まずいぞ。すぐ戻れ」

俺は、撮るのもやめてすぐ走って戻った。

扉の外へ出て、入り口で冨岡と合流する。

この中に閉じ込められる事はなくて助かった。

 


暗かった廊下には元通り明かりが付いている。

向こうから人の走ってくる音が聞こえ、廊下の角を曲がって数人が姿を表した。

「お前達そこで何をしている!?」

先頭の男が叫んだ。

ここで慌ててはいけない。

ダスターを持ったまま、俺は普通に歩いて近づいた。

冨岡も、同じダスターを持って俺の斜め後ろにいる。

最悪強行突破になるが、できるならここは穏便に済ませたい。

「何かあったのでしょうか?全館の掃除を依頼されたので、こちらの廊下の端までやっていたのですが・・・先程電気が消えたり大きな音がしまして何事かと思っておりました」

「・・・そうなのか。誰か頼んだのかもしれないな。こっちはもういいから下がってくれ。ご苦労」

「はい。分かりました。では失礼いたします」

俺は一礼して、ここのスタッフらしき数人の横を通り、エントランスの方に向かって歩いた。

冨岡も、すぐ後ろからついてきている。

完全に外に出るまでは、まだ気を抜けない。

ここに来て最初に見た、扉が開いている部屋が多い廊下を通り、エントランスへ抜ける。

そのまま真っ直ぐ外に出て、来る時に乗り越えてきた場所に向かう。

向かいながらスマホを出して、竈門少年に連絡した。

「今から外に出る。あの場所に誰も居ないか確認してほしい」

一応周りを気にしながら小声で話したが、周りは人の話し声などでザワザワしているし、こちらに注意を向ける者はいなさそうだ。

時刻を確認すると、中に入ってから30分ほど。思ったより早く済んだ。

 


内側から塀を越えるのは、近くに踏み台になるようなドラム缶や木箱などがあるので外から入る時よりずっと容易い。

人が見ていないのを確認して、ほぼ二人同時に塀を乗り越えた。

外に飛び降りると、竈門少年達三人が待っていてくれた。

「お疲れ様でした。早く終わりましたね」

「ありがとう。助かった」

「着替えるんなら隠しててやるぜ」

 


三人で立って壁を作ってくれている後ろで、素早く作業着を脱いで道具と一緒にバッグの中に押し込んだ。

「行く前に色々聞いていたからスムーズにいけた。感謝する」

「一番頑張ってくれたのは胡蝶先輩ですけどね」

「中はどうなってんだ?」

「ここで話すのはまずいな」

「今日は理事長から呼び出しがかかっている。もう数時間もすれば聞けるからもう少し待て」

「俺達も入れるんですよね」

「君たちは嬉しそうだな」

「いや・・そういうわけでも。けど、隠し部屋に入れるのはやっぱりちょっとうれしいです。変な事件は無い方がいいですけど」

 

隠し部屋での会議 宇髄天元

 

校長室の奥の隠し部屋。今この部屋にはまだ、理事長と悲鳴嶼さんと俺の三人しか居ない。

今日は日曜日で、学校に誰も居ない休日に会合というのも初めてだった。

もうしばらくすると全員揃うと思う。

 


「あの時奴らはなぜ、理事長を狙ったのでしょうね」

俺も思っていたことを、悲鳴嶼さんが先に聞いてくれた。

 


「皆ももう知っている事だと思うけれど、平安時代からずっと産屋敷家と鬼舞辻無惨との戦いは続いていたからね。元々は産屋敷家の血筋から出た鬼の始祖である鬼舞辻を倒して、大正時代には平和な世の中が訪れたように見えた。そして今また彼が暗躍している。あの時代とは違う形でね。我々は元々は同じ一族で、言ってみれば私も鬼舞辻と同じ側の人間でもあると言える。それだけに、彼らのやろうとしている事は見当がつく。彼らの事を知りすぎている人間は、きっと邪魔なのだろうね」

理事長は、あまり感情を入れずに淡々と話す人だ。

俺には想像もつかない、平安時代から続く壮絶な戦いの歴史。

「鬼が居なくなった平和な世の中のはずなのに、また別の不穏な動きがあるのですね」

「もしそうなら・・・今世も戦って、ぶっ倒すしかないって事ですね」

「そうだね。天元。ただ、難しいのは・・・」

再び理事長が静かに話し始めたので、悲鳴嶼さんも俺も聞く体制に入った。

「大正時代のように、鬼が人間を殺して喰らうという直接的な被害が出ているわけではないからね。表面では分からない所で、彼らは確実に少しずつ支配を強めていっている。最終的にはその支配体制を絶対的なものにして、命令通りに動く人間を支配下に置く。人造人間も、生きた人間の脳に影響を与える実験も、全てその一環だろうね。今はそれを完成させようとしている途中で、色々な実験を重ねているらしい」

 


「見方によっては魅力的にさえ見える物を彼らは用意してきていますね。元々知能指数が高く膨大な知識を持った人間の脳と、他の人間の脳を繋げて知識を共有するという研究もすでにあるようですし」

「そういう研究も確かにあるね。苦労せずに今すぐにでも専門知識を手に入れたいと思っている人間には、きっと素晴らしい物に思えるはずだね」

「俺は要らないですね。この前煉獄が言ってた・・・老いる事も死ぬ事も儚い人間という生き物の美しさだ。俺もその通りだと思います」

「便利で魅力的に見えるものに惹かれた人間が、彼らが用意した檻の中に自ら進んで入っていくという事ですね。私達のやれる事は、そうなる前にその人達を救う事でしょうか」

 


「・・・そちらへ行くことを、全員が拒否しているというわけでもないだろから、救うと言うと少し違うかもしれないね。ただ、何が起きているかを皆が知れるように、知った上で彼らの計画に乗りたくない人がそこから離れられるように・・・それを手助けするということくらいしか、やれる事は無いと思うよ。それでも彼らからしてみれば十分に邪魔な存在になるからね。命の危険を伴うという意味では前世と同じ・・・もしかするとそれ以上かもしれない。前世では、あの時九人居た柱のうち六人まで命を落とすという事が起きたけれど、それに匹敵する壮絶な戦いになるかも知れない。なので決して皆に無理強いはしたくない。私は一人でもやろうと思う」

 


「お館様は・・・いえ、理事長は、鬼殺隊の時から常にそのお考えでしたね。抜けたい者はいつでも抜けていいと。俺はやりますよ。俺の意思で」

「私も当然そのつもりだ。今日は全員の前でもう一度この話しをする事になるが・・・そこで抜けたいと言う者がいれば、決して無理に引き止めないというのが理事長のお考えだ。私もそれに賛成する」

「彼らは恐怖を煽って従わせようとするし、自分の配下でも従わない者に対しては容赦しない。計画に対して邪魔立てする者に対しても同じ事だろうと思う。拷問もあれば命を奪う事もある。それが自分だけでなく、自分の周りの大切な人に及ぶ事もある」

 


「それでもやるだけの覚悟があるかというところは、鬼殺隊の時と同じですね」

俺は思ったことを言ってみた。

もちろん、自分の気持ちに迷いは無い。

 


「あの頃よりもある意味難しいと思うよ。大切な人を鬼によって殺されたり、そういうことがあれば戦う理由になる。鬼殺隊に入ってくる子達はほとんどがそうだったからね。それが今は一見平和な世の中で、そんな事は起きていないように見える。今の平和な状況を壊すかもしれないところに、わざわざ自分から飛び込んでいく覚悟が、必要になってくるからね」

 


わざと時間を少しずつズラしてて、少しずつ皆が集まってくる。

今日は初めて、ここに学生組も呼んでいる。

 


「すげー!!かっけー!!」

「もう分かったから座ろうよ」

「なんか物々しい雰囲気なんですけどぉ。怖いよぉ炭治郎」

急に賑やかな奴らが入ってきた。

嘴平は相変わらずテンションが高い。

一番しっかりしてそうなのは竈門だろう。多分。

だけど前世でのこの三人を知っている俺は、本当は三人とも相当に強いし根性もあると思っている。

前世強かったのは間違いないのだし、今世でも能力や適性はそう大きく変わってはいないと思う。

前世の記憶があるなら尚更だ。

 

 

 

前世で鬼殺隊の柱だった九人、それに竈門、嘴平、我妻の三人が加わって理事長含め十三人が部屋の中に集まった。

これから、この件に関わっていくかもしれないメンバーがこれで全員という事になる。

最近起きた原因不明の飛び降り自殺の事から話しが始まった。

 


最初に俺が、死んだ男の霊と話した事を報告した。

悲鳴嶼さんはあの場でずっと見ていてくれたので、俺の説明の足りないところを補足してくれた。

「幽霊ってやっぱ体が透けてて向こう側が見えたり足がなかったりするの?」

我妻が、素朴な疑問を出してきた。

こういう風に思ってる奴多いんだろうな。

「ほとんど普通に見える。生きてる人間と変わんねぇ感じ」

「最初見た時は話しかけなかったんですか?」

今度は竈門が聞いてきた。

「今回でも前にもそういうの見たことあるけど話しかけようと思ったことはないわ。あんま関わりたくないし」

俺は、この辺で話をまとめにかかった。

「あの男は自分が死んだことも最初わからなかったらしい。俺が話しかけてやっと認識したようで、マンションから飛び降りたことさえ覚えていなかった。自分の意思で決意して死んだわけでもねぇし、そうなんのかな」

「今は無事成仏してくれた」

最後に霊を慰めて成仏させてくれた悲鳴嶼さんが言った。

「最後成仏できただけでも良かったかもね。死ぬ理由もないのに若くして死にたくはなかったでしょう

 


不死川と伊黒はずっとパソコンに張り付いて、別ルートでこの剣を追跡調査していた。

そして昨日になって、原因不明の飛び降り自殺をしたこの若い男の、ツイッターアカウントを突き止めた。

ツイートの内容を遡ってみたところ、治験に行ったあたりから、時々意識がぼーっとするようになったというのが分かる。

それまではどちらかと言うと活動的なタイプで、休日のスポーツや友達との交流を投稿している。

そして治験が終わって帰ってきた後、投稿は止まっている。

 


治験から帰って以降の記憶が抜け落ちているという、俺がこの男の霊に聞いた内容と完全に一致する。

 


胡蝶と時透は、そこから友達を探し出して、身内装って直接色々聞いたという報告をしてくれた。

自殺した男本人以外から聞いたその内容も、やはり全て一致している。

「亡くなった彼の友達だったと言いましたけど勝手に想像してくれて、付き合っていたのかと思ってくれたみたいで皆んな結構親切に教えてくれました」

情報を引き出すために必要とあれば、嘘もサラッと言ってしまうところはさすが。

美人の胡蝶に話しかけられて嬉しくない奴はあまりいないだろうから、それも手伝って聞き込みはうまくいったのだと思う。

 


時透も同じように、サラサラと嘘を言ったらしい。

「子供の頃よく遊んでもらった親戚のお兄ちゃんで・・・とか適当なこと言ったらけっこう信じてくれて色々教えてくれたよ」

穏やかな笑顔で報告してくれる。

普通の十四歳でこれだと人としてどうなんだと思うところだけど、前世の記憶ありで鬼殺隊の柱だったと思えばこれも分かる。

前世では天才剣士だった。それだけのことはあるといったところか。

今世は武力より頭脳で戦う。

嘘を吐くと顔が変わる竈門はこういうことは苦手で、嘴平も我妻もあまり器用な方ではない。

 


最後は、煉獄と冨岡、竈門、嘴平、我妻からの報告で終わった。

治験バイトの怪しさ、人間の脳に影響を与える実験、アンドロイド・・・

全てが繋がった。

建物周りを調べた三人の報告では、今のところ警備は手薄らしい。

けれど今回の事でもし侵入がバレていて疑いを持たれていたら、これからは厳しくなるかもしれない。

 


理事長は、会合の始まる前に俺と悲鳴嶼さんにだけ話した内容を、一人一人の顔を見ながらもう一度話した。

そして話しの最後に、降りるか続けるかは今決めなくてもいいと言ったにも関わらず全員が続けると即答した。

「無理している子はいないみたいだね。本心だとわかるから、皆の気持ち有り難く受け取らせてもらうよ。一緒にやろう。これだけ居れば全員で何とか出来る。私はいざとなれば命は惜しくないし皆も同じだとは思うけど、出来ることなら誰の命も失われない方がいい。無理はしてはいけないよ。勇猛と無謀は違うからね」

理事長の言葉は耳に心地よく響き、胸に沁み渡る。

もう一度この事を自分に言い聞かせながら、明日からまた、俺に出来るだけの事をやっていこうと思う。