大人のヲタ活記録日記

年季の入ったオタクのブログ。オタ活を楽しむ日常の事、一次創作、二次創作イラストの保存、漫画の感想など。

13 二次創作小説第13話

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事件の翌朝 竈門炭治郎


毎朝パン屋の仕事で早く起きているものだから、昨日明け方に寝たというのにそこそこ早く目が覚めてしまう。

家には連絡を入れているし、学校は日曜で休みだし、今日は急いでやらないといけない事は何も無いのだけど。

部屋にいる他の皆んなはまだ寝ている。

寝ているみんなを起こさないように、そっと起き上がって枕と座布団を部屋の隅に片付け、鞄を持って部屋を出た。

洗面所は勝手に使っていいとの事だったので、冷たい水で顔を洗うと気分もスッキリした。

 


庭に出て歩いていると、煉獄さんのお父さんの槇寿郎さんと鉢合わせた。

「おはようございます。昨日は泊めていただいてありがとうございました」

「おはよう。まだ早いぞ。眠れなかったか?」

「家業がパン屋なもので。早起きが習慣だから目が覚めてしまうんです。これから朝稽古ですか?」

「今日は道場は昼からだ。これから昨日の現場へ行ってみようと思ってな」

「それならご一緒していいですか?」

「君の方が場所を知っているだろうから、来てくれるならむしろありがたい」

話しながら車庫へ向かって歩いていると、後ろから伊之助が追いかけてきた。

「紋次郎!勝手に自分だけ行くんじゃねぇぞ!」

「皆んな寝てたから起こしたら悪いと思ったんだよ」

「俺は眠く無いぞ!親分だからな!」

「わかったよ。ありがとう」

俺達が戦った時は人は誰も死んでいなくて、ところが後で伊之助達が行った時は全然違う状況だったようだから。

俺はその事は知らないし、来てくれるならありがたい。

「俺達を襲ったあいつらが死体を片付けに来てたとしたら、今頃死体はもう無いかもしれねぇけどな」

 


「瑠火さんの車が無いな。杏寿郎が借りて行ったか」

「俺が起きた時見たら隣の部屋全員いなかったぜ」

伊之助が言った。

襖一枚隔てた向こうは先生達の休んでいる部屋だ。

俺は確かめなかったけれど、もう皆んな起きて出掛けて行ったのかもしれない。

「行ったとすれば病院か山の方か、どちらかの現場だろう。私達も行こう」

 


やっぱり煉獄先生達は、先に来ていたらしい。

昨日の現場に近づくと、車が一台止まっているのが見えた。

俺達も到着してすぐ車から降りると、煉獄先生、宇髄先生、冨岡先生、不死川先生の四人が、山道から下に降りてきたところだった。

この四人は、俺達が泊めてもらった部屋の隣の部屋で休んでいた先生達全員だ。

伊之助が「襖を開けたら全員居なかった」と言った通り、先生達は早くから起きて出掛けて来ていたらしい。

 


「おはようございます!」

俺は、先生達に向かって声をかけた。

皆んな気がついて、こっちに向かって歩いて来てくれる。

 

 

 

「俺達か昨日戦った場所には、矢の一本も落ちていなかった。木に突き刺さった矢の跡が、かろうじて残っているくらいだ。人が死んでいて血飛沫が飛んでいたというのも聞いたが、そういった痕跡は全く無かった」

「車が爆破された跡だって綺麗なもんだけど、数人程度でそんなに早く片付けられるわけ無いし。なんか組織ぐるみで動いてる奴らがいるしか考えられねぇわ。場所は昨日印つけといたからね。ここだ」

宇髄先生が、ガードレールにライターの火を近づけると、赤い色が浮かび上がった。

敵はこんな仕掛けまで見つけられはしなかったと思う。

 


先生達は先に来て、四人で手分けして昨日の事件のあとを調べたらしい。

激しい戦いがあった痕跡も、人間の死体も、壊れた戦闘用アンドロイドも、車が爆破された跡も、綺麗さっぱり消されていたらしい。

この事があったのは昨日深夜から今日の明け方にかけて。

今まだ午前中だし、そんなに時間は経っていない。

 


俺も、車が爆破された所を目の前で見ている。

相当に酷い状況だった。

あの状況から、バラバラに飛び散った車体の残骸と、自爆したアンドロイドの残骸を拾い集めて片付け、路面を洗って、山の中での戦闘の痕跡も跡形もなく消してしまうとは。

かなりの人数を投入しなければ出来ることではない。

 


警察に通報しにくい事情があるのは、向こうもこちらも同じ。

それにしても、誰にも気付かれず、こんな短時間によく片付けられたもんだと思う。やはり大きな組織が裏に存在するのか。

 


「あそこで血塗れで三人も死んでたぞ。跡形もなかったのか?」

伊之助が聞いてきた。

「丁寧に見たつもりだが人の死体などどこにも無かった」

冨岡先生が答えてくれる。

「死体どころか血の飛び散ったあとも無かったぞォ」

隣に居た不死川先生が捕捉してくれた。

「もう片付けられたのか・・・ 」

伊之助はまだ、腑に落ちない様子だ。

 


昨日実際に死体を見た伊之助からすると、たしかにそれは一番気になるはず。

俺達が倒したのはアンドロイドではなく人間で、あの時点では命に関わる傷など負っていなかった。

それが、時透君と伊之助が行った時には、自分で頸動脈を切って絶命していたと言う。

その後はおそらく、死体を片付けに来た連中に二人は見つかって、追い払うために襲われたという事だと思う。

それが今は、死体どころか血飛沫が飛んだ形跡すら無いと言う。

 


「まさか昨日全員揃って幻を見たという事など無かろうと思う。組織ぐるみでこの事を隠している連中が、裏に居るのだろうな。考えたくはないが、国の機関の中にもその連中と裏で繋がっている奴らが・・・少なくない人数居るのかもしれないな」

「煉獄先生。俺も今それを考えてました。もしそうだとしたら、他にもあちこちでこれに似たようなことが起きていても、全て隠されているということでしょうか・・」

背筋が寒くなるような話だ。けれど・・・

「有り得なくはないな。残念だが」

煉獄先生の答えは、予想していた通りだった。

 


煉獄家での会議 産屋敷耀哉

 

「杏寿郎。すっかり世話になってしまったね」

「とんでもないです。この場所が役に立って本当に良かったです」

「助かったよ。ありがとう。世話になったついでに、済まないがもうしばらくここを貸してもらえないかな?」

「いくらでも使ってください。両親もそう言っていますので。会議ですか?」

「察しがいいね。その通り会議に使わせて欲しい。学校のあの隠し部屋は、休日に全員で学校に行くと目立ちすぎるからね」

「昨日十分に調べたので、おそらくここには盗聴器は無いと思います。広く使える部屋を用意しますね」

「朝から皆で昨日の現場へ行ってくれたのだね。杏寿郎も天元も、傷はもう大丈夫なのかな?」

「矢が刺さったわけではないので、大した傷ではありません」

杏寿郎は快活に笑って答えてくれる。

私は今世でも、この子達を危険に晒してしまっているというのに。

危険を顧みずに協力してくれるこの子達が居るから、私もここまでやってこれた。

誰も命を落とすことなど無いように、守っていきたい。

 


純日本家屋であるこの家の作りは、産屋敷家とも似ている。

部屋の区切りの襖を外せば、大きな一部屋として使えるようになっている。

今、途中から加わったカナエを入れて全部で十四人が、ここに集まっている。

今回連れ去られて事件に巻き込まれてしまった炭治郎の妹と実弥の弟も、ここにまだ休んでいる。

会議の間彼らが、病院の地下の施設から助け出された子供達を見てくれている。

 


「皆で朝から現場を見に行ってくれてありがとう。跡形も無かったという報告は聞いたけれど、予想通りだね。ここに残った私達も、昨夜の事がニュースになっていないか調べてみたんだ。病院でタバコの不始末による小火があったと小さく報じられている以外は、何もなかったよ。あの病院にも行ってみたんだけどね。もう綺麗に終わっている感じで警察や消防の姿も無かったよ」

今朝、ここに残った皆が、新聞、テレビ、インターネットのニュースを確認してくれている間に、私は行冥と二人で病院の近くまで行ってみた。

そしたら案の定。この結果はほぼ予想していた通りだった。

 


今起きている事に関して、明らかに隠蔽工作が行われている。

それも、権力の側にいる者達によって。

人の死さえも、無かったことにされている。

自分達が関わった事など、その中のほんの一部であって、他の所でも同じような事がいくらでも起きていて、また隠されている。

 


ここまでは、もう言わなくてもここに居る全員が気がついている。

 


「鬼が居なくなって平和になったと思ってたら、今もこの世の中腐ってるって事かよ・・」

「残念だがそのようだな。だからこそまた、何とかするしかない」

「どうやって何とかするんだァ?」

「今の方がむしろやりにくい」

 


「情報発信の方は、うまくいっていると思うよ。私達以外のところでもね。ここ数年特に彼らのやり方が露骨になってきたから、おかしいと気がつく人が増えてきているらしい。発信するのも危険が伴うには違いないけどね。彼らの計画に気がついて、そこに流されない人の方が多くなれば、彼らが何を仕掛けてこようと何を決めようと関係なくなるからね」

私の言っている事が、伝わるだろうか。

皆それぞれ考えているらしい表情をしている。

 


「たしかに、庶民の方が圧倒的に数が多い事を思えば・・・たとえ彼らが権力の側に居たとしても、ごく少人数だとすれば・・・庶民が誰も彼らについていかなければ力を発揮することは出来ないですね」

「そういう事だよ。行冥。多くの従う者がいてこその権力者の力だからね。皆んなに背を向けられたら彼らは何も出来ないし力を失う」

 


「彼らの計画や、裏でやっている事を知らないで乗ってしまっている人達が今多いとしたら・・・情報の発信でそれが変わるかもしれないということですね」

「そうだね。杏寿郎。目立ってきた情報発信者の多くが不可解な死を遂げた事を考えると、勇気がいる事ではあると思うけれど」

「それも数が多くなれば変わってくるんじゃないですか?発信者が何十万人とかなれば、全員ぶっ殺すわけにいかねぇし・・・」

「それもその通りだね。天元。実は日本以外の国で、そういう流れになって彼らがそこでの支配を諦めたという例がいくつもある。日本でもきっと出来なくはないよ」

「逆に今の所はまだ、日本では難しいって事ですか?」

「便利なものに憧れる気持ちが強いからね。脳の中身を人と共有して出来ない事を出来るようにするとか、全ての個人情報が一括管理される便利な社会とか、体を機械化して特別な力を手に入れるとか・・・そういう事が進んでいてかっこいいと思われているところがどうしてもあるからね」

「俺は気持ち悪いとしか思わないですけどね」

「同感だ」

「何がいいんだろうなァ」

 


「裏でここまでえげつない事やってるって、知らない人達はきっと多いんでしょうね。便利とか能力が増えるとか、表面の華やかな部分だけ見てかっこいいと思ってるのかなって・・・全部を知ったら引く人は多いんじゃないかと思うんです」

「そうだね。炭治郎。そのあたりの事に気がつく人を増やすための発信という事だね。知った上でそっちが好きという人も一定数居ると思うし、それはもう仕方ない事だけれど。どっちが正しいというわけじゃないからね」

 

 

異変 宇髄天元

 

これからも情報発信と、今回の病院の地下のような情報を掴んだ時は実力行使でいこうという内容で話がまとまり、今日の会議はお開きになった。

煉獄家で昼食を用意してくれていたのでよばれて、その後は理事長含め数人が、自宅に用事があるというので帰っていった。

俺は、煉獄、不死川、冨岡と一緒に、今日泊まった部屋にそのまま残っている。

俺達以外では、竈門兄弟と玄弥、胡蝶が、子供達の世話をするために残った。

病院の地下のあの恐ろしい場所から、安全なここに来て、子供達は皆んな表情も明るくなり元気になってきた。

帰る場所がある子供は、今日明日にも迎えが来て無事帰れそうだ。

一人も怪我や病気が無くて、本当に良かった。

 


「煉獄。お前今日いつもの半分も食べなかったね。大丈夫?」

「何でもない。少し疲れているのかもしれない。今日早めに寝れば多分回復するし、明日は大丈夫だ」

煉獄はそう言って笑顔を見せるけれど、やっぱり普段と違う。

食事の時から気になっていた。

いつもの食欲と元気が無かった。

昨日はたしかに夜中から走り回ったし、寝不足ではあると思うけど。

仮眠程度には睡眠を取っていたし、もっと寝ていなくても平気なくらいの体力は、普段ならある奴だから・・・

「心配かけてすまないな。宇髄。本当に大丈夫だから。俺は今日は部屋でゆっくりするとしよう」

「ほんとに大丈夫か?」

「気分良くねぇんだったら医者行けよォ」

「それか胡蝶に観てもらうか?」

俺だけでなく、近くにいた冨岡と不死川も心配して声をかけてくる。

 


煉獄は、休めば治ると言って部屋に入って行った。

元々ここは煉獄家だし自分の部屋もあるから、部屋で寝るのが一番落ち着くのだろう。

 


俺もさすがに今日は、いつもより疲れたと感じている。

昨夜色々考え事をしてしまってほとんど眠れなかったからかもしれない。

普段から、絵を描いていて気分が乗ってきた時は徹夜なんて平気なのに。

今追いかけている内容が内容だからか?神経がまいってるのか?

前世鬼狩りやってたんだし、精神的にもそんなにヤワじゃねぇはずなんだけど。

 


「宇髄。大丈夫か?」

気がついたら冨岡が俺の顔を覗き込んでいた。

「人のこと言えねぇわ。俺も疲れてんのかも。ちょっと休むわ」

「無理すんなよォ」

 


今日四人で泊まった部屋に戻り、枕と座布団を並べ直して横になった。

微熱があるのかもしれない。

体が少しだるい。

喉が渇いてきたから、後で水をもらってこよう。

今はあまり動きたくない。

 

 

 

俺はいつのまにか眠っていたらしい。

気がつくと、冨岡と不死川が近くにいて、二人の話し声が聞こえていた。

盆にのせた水差しとコップも持ってきてくれている。

有難い。起きて水をもらうか・・・

「起きたか」

「大丈夫か?」

二人が話しかけてくる。

「大丈夫だ。水が欲しい」

俺はゆっくり体を起こして、その場に座った。

何?

頭がグラグラする。

眠ったのに回復してないのか?

「宇髄。具合が悪いのか?」

「顔色良くねぇぞォ」

二人の声がだんだん遠くに聞こえる。

何だこの感じ?

 


「失礼します。ちょっといいですか?」

襖が開いて、隣の部屋に居たらしい竈門の声が聞こえた。

「どうしたァ?」

「禰豆子が、さっきから急に気分が悪くなったみたいで。最初はただの疲れかと思ったのですがどんどん熱が上がってきて・・・もしかして傷からバイ菌が入ったんじゃないかと・・・」

「病院行った方がいいかもしれねぇなァ」

不死川が、立ち上がって隣の部屋を見に行った。

 


その間に冨岡は、俺に水の入ったコップを渡してくれる。

よく冷えた水を一口飲むと、ホッとして生き返った気がした。

それでも頭がグラグラするのは変わらず、耳鳴りがしてきた。

竈門の妹は大丈夫か?

煉獄は?

 


そこまで考えた時、自分の体調不良と重ねて、気がついた事があった。

俺と煉獄と竈門妹の共通点は、あの時怪我をしたということ。

あの矢・・・もしかしてあれに毒か何か仕込んであったのか?

けれどそれにしては、あの時すぐでなくて何で今頃?