大人のヲタ活記録日記

年季の入ったオタクのブログ。オタ活を楽しむ日常の事、一次創作、二次創作イラストの保存、漫画の感想など。

14 二次創作小説第14話

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薬の効能 煉獄杏寿郎

皆んなに心配をかけてはいけないと思い、一生懸命平気な様子を見せようとしたけれど、宇髄には分かっていたらしい。
部屋に戻って横になったけれど、目眩と体の怠さは取れない。
食欲がいつもより無かったのは宇髄に指摘された通りで、それでも無理してある程度食べたことでかえって気分が悪くなった。
部屋に戻るまでに、トイレに寄って胃の中の物を全部吐いてしまった。
それで多少はスッキリしたけれど、まだ治ったとは言えない。

自室にこもって横になり、しばらくするとやたらと水が欲しくなって、弟に持ってきてもらった。
熱もあるようだから、水を飲んだ後布団にもぐって体を温め、汗をかくようにつとめた。
このまま頑張っていれば熱が引くかもしれない。
そう思って布団の中でじっとしていると、廊下の方の入り口から声をかけられた。

「煉獄先生。いいですか?」
胡蝶の声だ。たしか、子供達の世話をするのに残ってくれていた。
「どうぞ」
返事を返すと、襖を開けて胡蝶が入ってきた。
「かなり辛そうですね。よかったらこれ、飲んでみてください。私も自分の体で試したりしたので危険は無いと思いますので」
差し出されたコップの中には、湯で溶かした漢方薬のような物が入っていた。

「ありがとう。もらおう」
上半身を起こして布団の上に座り、受け取ったコップの中の物を一気に飲み干した。
見た目の通り漢方薬のような味で、苦いが嫌な感じはしない。
「あと、傷口見せてくださいね」
包帯を解いて傷を消毒し、何か絆創膏のような物を貼って、包帯を巻き直してくれた。
「ありがとう」
「傷はそんなに深くないですね。このまま放っておいてもふさがると思います。矢に何か仕込まれていたようで、炭治郎君の妹さんと宇髄さんもあれから具合が悪くなってしまいました。この薬が効けば、回復すると思います」

「よもや。そうなのか?あの時矢傷を負った全員が・・・」
「この薬は、解毒の効果があるんです。あの治験に行って具合が悪くなった人や、脳をハッキングされて操られていた人達にも、これを飲んでもらいました。効果は上がっています」
「それは素晴らしいな。そういえば薬のことは、前に会議の席で聞いていたな。しかしあの矢にも同じものが仕込まれていたのか」

「全部の矢がそうかはわかりませんけど、そういう物が含まれているのは間違いないと思います。治験に行って具合が悪くなった人の症状と、煉獄先生達三人の症状もほとんど同じですから。あともう一つ、体の中に入れられたかもしれないものがあるので、取り出せるかやってみますね。さっき傷口に貼ったのは磁石です。1ミリにも満たない大きさのマイクロチップが、治験に行った人達の体から出てきた例があるんです。その場合は、皮下に直接入れられた形ですけど」
「金属製の物なら磁石に吸い寄せられてくると?」
「そういうことです。入ってなければそれに越したことはないんですけど」
「それが入ると、自分の位置を常に確認されたりするということなのか?」
「どこまで彼らの思うままにそれが可能なのかは、私もまだわかりませんけど・・・彼らがそういうことをやろうとしているのは事実のようですね。けれど今はあまり色々考えずに、とにかくゆっくり休んでください」

 

胡蝶が部屋を出て行った後、どれ位眠ったのだろう。
しばらくウトウトした位だろうと思って壁の時計を見ると、夕方の五時を回っていて驚いた。
普段なら、昼間から四時間も五時間も寝る事など無いのだが・・・
回復しようとする体の自然の働きなのか、死んだように眠っていたらしい。

大量に汗をかいて、着ている浴衣も敷布団も掛け布団も、全部ぐっしょり濡れている。
そのおかげなのか熱は下がったらしく、体の方はずいぶんとスッキリした感じがする。
ゆっくりと体を起こしてみると、吐き気や頭痛はもう感じなかった。

風呂にでも入ってくるかと思って立ち上がりかけると、襖が開いて宇髄が入ってきた。
「煉獄。大丈夫か?」
「胡蝶から薬をもらって飲んだら楽になった。君も大丈夫か?具合が悪くなったと聞いたが」
「久々に辛かったわ。もう治ったけど」
「風呂に行かないか?汗をかいたからスッキリしたい」

うちの風呂は、三〜四人は入れる位広さがある。
竈門少年にも声をかけて、皆んなで入った。
竈門妹はまだ横になって休んでいるけれど、熱が下がって落ち着いてきたということだった。

手桶で湯船の湯をすくって頭から浴びると、生き返ったような気分になる。
汗でベタベタしていた体がサッパリして最高に気持ちがいい。

汗を流した後は、湯船に浸かってゆっくりと体を伸ばす。
竈門少年は、俺の向かい側で湯船に浸かっている。
宇髄は太腿に傷があるので、膝から下だけを湯の中に入れて浴槽のヘリに座った。
「皆んなこれくらいで済んでよかったわ」
「禰豆子が苦しみ出した時は、どうなる事かと思いました。本当にこれで済んで良かったです。しのぶ先輩とカナエ先生のおかげですが」
「本当にそうだな。救われた。しかしあれは体験したことのない感覚だったな。治験に行った人達は注射や薬で皆んなあんな風になるのだろうか」
「体の弱い人だったら死んじゃいますよね」
「まあそういう奴はあんまり治験とか参加しねぇだろうけど。入れる薬の量とか濃度とかで色々違うんじゃないの?あと本人の体質とか」

「人間の肉体を乗っ取って好きなように操るのが目的なら、薬の中身は脳に影響を与える何かだろうな」
「大正時代には無惨の血で人間が鬼に変えられましたけど、鬼に変えられた人間は記憶も自我も失いましたよね。今は・・・その血に当たる物が人間の体に直接入れられるとしたら・・・」
「今のところ自我を失ったわけじゃねぇから良かったわ」
「ほっといたらそんなこともあり得たかもしれないですし、薬が解毒になって良かったです」

 

 

明日に向けて 竈門炭治郎


部屋に戻ると、禰豆子は目を覚ましていて布団の中から俺の方を見た。
「禰豆子。まだ辛いか?」
「もう大丈夫。心配かけてごめんね。あのお薬をもらってからすごく眠くなって、眠って起きたら体が軽くなった感じ」
「そうか。良かった。まだ無理して起きなくていい。もし気分が良くなって大丈夫そうだったら、風呂を貸してもらえるから後で行っておいで」
「そうなの?嬉しい。汗かいてベタベタしてるから、もうちょっと休んだらお風呂に入ってスッキリしたい。お兄ちゃんは行ってきたんだね」
「さっき煉獄先生と宇髄先生と一緒に行ってきたよ。檜のお風呂ですごく広いんだ」
「ほんと?楽しみ!」
禰豆子は笑顔を見せた。顔色も良くなっている。
もう大丈夫だ。

廊下を歩いてくる足音がしている。誰か帰ってきたようだ。
襖を開けて覗いてみると、冨岡先生と不死川先生だった。
たしか槇寿郎さんの車を借りて、もう一度昨日の病院の様子を見に行くと言っていた。
「おかえりなさい。どうでした?」
「入れなかった。やはり怪しい」
「燃えたのは地下が主なはずで、煙が上まで上がっただけだろォ。もしまともに調べてれば、地下にあの施設があるのはバレてるはずだからなァ。調べる事もさせねぇだけの権力が働いてるってことだろ」
「やっぱりそうなんですね」

「妹は大丈夫か?」
「もう大丈夫です。落ち着いてきました」
「良かった。それならお前もこっちに来て話すか?」
冨岡先生が、話し合いに俺も呼んでくれた。
「はい!行きます!禰豆子。俺は隣の部屋に居るから、もう少しここで休んでおいで」

 

 


部屋には、さっきまで風呂で話していた煉獄先生、宇髄先生も居て、しのぶ先輩も少し後から入ってきた。
六人で座卓を囲んで、千寿郎君が持ってきてくれたお茶を飲みながら話している。

千寿郎君が来た時に聞いてみたけれど、身元の分かった子はもう帰って行ってたらしい。
ちゃんと身内が迎えに来てくれて、本当に良かった。
行くところの無い子は理事長が面倒を見るらしい。
今は、煉獄家の人達と玄弥さんが子供達を見てくれている。
それを聞いてほっとする。
他の所でもこんな事が沢山起きていて、自分達が助ける事が出来たのは、その中のほんの一部の人達だけれど・・・でも何も出来ないよりずっといい。
昨日、助けられた子供達一人一人の顔を見た時、心からそう思った。

「さっき禰豆子さんの傷は調べましたけど、マイクロチップは出てこなかったですね。宇髄さんと煉獄さんはどうですか?あるとすれば・・・」
しのぶ先輩が言い出したので、二人が傷口に貼ってある磁石を取って見せた。
しのぶ先輩が、虫眼鏡でそれを確認する。
「これは多分そうですね。煉獄さんの方は無いみたいです」
「げっ?!俺だけかよ」
「矢は沢山撃ってきてるでしょうし、おそらく特に狙われたわけではなく誰が当たるかは分からなかったと思います」
しのぶ先輩は、グレーの磁石の上から取ったそれを、白い紙の上に移動させた。
「磁石で出てくるくらいですから浅い所にあったと思いますし、機能はしていないと思いますが・・・こういう形で入れるのが可能かどうか実験的にやったのでしょうね」
「ろくでもねぇ事ばっか考えてやがるな」
「そういう人達ですから」
「俺達とは物事の価値基準が違うらしい」

「傷口から取った血液は調べましたけど、変な物は入ってなかったですから大丈夫です。あれを入れようと思ったら直接注入しないとまず無理でしょうけど」
しのぶ先輩がっ言っているのは、ヒドラのような形状をした生物のようなものの事かと思う。
脳をハッキングされたらしい人の血液からは、それが出たらしいけど。
そんな物入れられなくて本当に良かった。

 

 

昨日の夜は、結局煉獄先生のところで晩御飯までいただいてしまい、夜の九時頃に先に席を立った。
夕食までの時間ゆっくり休ませてもらえたから、禰豆子の具合もかなり良くなった。
それでも徒歩と電車はまだちょっと辛いかと考えて、タクシーを呼んでもらった。

帰りのタクシーの中で、昨日今日の事を振り返って考えた。

夕食で顔を合わせた時、全員無事な様子に胸を撫で下ろした。
禰豆子と煉獄先生、宇髄先生の夕食は、お粥だったけれど。
皆んな起き上がって食事が取れるまでに回復して何より。
一時はどうなる事かと肝を冷やした。

煉獄家の人達、お邪魔している俺達全員で、同じテーブルを囲んで夕食を取りながら色んな事を話した。
土曜日の夜から本当に大変な事が多すぎて、わずかな時間の間に何ヶ月分も体力と精神力を使った気がする。

前世はむしろそういう日々が普通だったけれど。
今世生まれてから今日まで十数年は平和に生きてきたから、今のような事態には耐性が無い。
けれど「平和に生きてきた」と思うのは・・・表面的にそうだからそう思っていただけで、実は裏でとんでもない事が起きているのに知らなかっただけだ。

皆で夕食を取っている最中にも、理事長から連絡が入っていた。
「連絡来てるわ」
最初に気がついたのが宇髄先生で、スマホの画面を確認していた。
一斉送信で来ている連絡なので、俺もすぐ確認した。
内容は、明日の夕方、隠し部屋での会議があるとの事だった。
全員であの場所に集まるのは、おそらくこの時が最後。
それ以降は、俺達の中の誰でも、あの場所を好きに使っていいとの事。
集まりの事が知られてしまったのか・・・でもそうなら、明日はあの場所でやらないだろうし。目立つ会合を重ねていると知られる恐れがあるから、そうなる前にやめておこうという事なのかもしれない。

 

 

翌日の昼休み 宇髄天元


昨日一晩、普段より少し多めに睡眠を取ったせいか体調はほぼ元に戻った。
胡蝶からもらった薬も、寝る前と今朝に飲んだ。
傷が腫れたり熱を持っている様子もないので、おそらくもう大丈夫だろう。
事情を知っている奴は皆んな、今朝から気を使ってこっそり声をかけてくれた。
あんな戦いの事は関係者以外には内緒だから、大きな声では言えない話だ。
食欲はまだ今ひとつ。と言うより俺は以前から、怪我をした時や体調が万全でない時は、食べない方が回復が早い。
昼休みは、自動販売機でコーヒーだけを買ってきた。

「宇髄。今日は食べないのか?」
授業を終えて職員室に戻ってきた煉獄が言う。
「あんまり腹減ってねぇし、これでいいわ。お前は?」
「俺も今日はいつもより少なくしてもらった」
そう言って取り出した弁当箱の大きさを見ると、決して小さくはない。
でも普段のこいつの弁当から比べると三分の一程度だ。
「まだ体調戻んねぇの?」
小声で聞いてみる。
「もうほとんど大丈夫だ!」
「何が大丈夫なんですか?」
同じ職員室に居た響凱が、怪訝そうな顔で聞いてくる。
小声で聞いた意味がねぇっつうの。
「何でもない!体調を崩しかけたがもう治った!」
「そうなんですね。まだ暑いですしねぇ」
夏バテかなんかと勘違いされたようで良かった。

食堂に食べに行く奴は次々と職員室から出ていき、冨岡は葡萄パンを持って外へ行き、残っているのは俺と煉獄、不死川の三人だけになった。
不死川も、俺の向かいの席で弁当を広げている。

職員室に置いてあるテレビに目を向けると、鬼舞辻議員のインタビューが始まったところだった。

資産家の家に生まれ、容姿端麗、有名大学、大学院を卒業、学生の頃から起業していて、いくつもの事業を成功させている。
絵に描いたようなエリート。
けれど、ただ運良く金持ちの家に生まれただけというのとは違い、自身も有能。
世襲の目立つ政治家の世界では珍しく、家系の中に政治家は居ない。
自身の事業で得た利益を慈善団体に寄付するなどして、名前を知られている。

一方、政界や財界の闇を暴く系のサイトでは、鬼舞辻議員についての黒い噂も囁かれている。
それでも証拠があるわけではないので、今のところ噂の域を出ない。
黒い噂がある有名人と言えば他にも沢山居るわけで、よほど目立つ事件でも無いかぎり、一人にのみ追求の手が伸びることは無い。

画面で見ているだけでもたしかにオーラはある。
あの見た目に社会的地位、財力だけあって、若い子から年配者まで幅広く女性ファンも多い。
鬼舞辻議員に影のように寄り添う議員秘書の黒死牟も、同じように目立つ経歴と見た目のため、ファンが多い。

「最近特によくテレビで見かけるようになったな」
俺の隣の席で弁当を食べながら、煉獄が言った。
「選挙前ってのもあるんだろうけどなァ。前世から比べると奴がこれだけ表に出てきてんのが不思議な気がする。前世では長年、奴の姿見た者が柱でもほとんど居なかったからなァ」
「今世は鬼でなく普通に人間だからな。太陽が怖い事はないのだろう」
「それもその通りだけどもう一つは・・・奴が頂点に居る存在じゃねぇから隠れる必要無いって事でしょ。むしろ経歴や見た目の派手さを利用して表に出てきてやがる。そういう役割なんじゃないの」
「闇の勢力の広報担当ってやつかァ」
「おそらくそんなとこでしょ」

テレビ画面を見ながら三人で話しているうちに、内容は次のニュースに移っていった。

静かな山間部の村落で起きた集団食中毒事件。
昨日の午後、数十人が突然体調不良を訴え、そのうち数人が救急搬送されて重症。うち一人が今朝死亡したというものだった。
詳しい事は調査中でまだ不明な点が多いが、ここで使われていた井戸水が原因ではないかと見られている。
何らかの原因で水質が変化したのではないかということだった。

このニュースが伝えられたのはほんの数十秒ほどの間で、サラッと流された感じだった。
けれど、俺はこれを聞いた瞬間何かが引っかかる気がした。
煉獄と不死川の顔を見ると、二人ともテレビ画面を凝視している。
おそらく考えている事は同じだと思う。

「井戸水の水質とは、そんなに急に変わるものだろうか。俺の家は以前井戸水を使っていたようで、今は使ってはいないが井戸は残っている。比較的最近まで使われていたと聞くが、井戸水で誰かが死んだなどという記録は過去一度も無かったように思う」
「普通そうだろうなァ。ずっと使われてた水なら多少途中で水質が悪くなっても、せいぜい腹壊す程度だろォ。今のニュースの井戸水も、ずっとそこで使ってたわけだし急に人が死ぬとかそんな事滅多に起きるわけねぇよなァ」
「人為的ってこともあり得るかも」
「俺もそう思う」
「多分そっちだろうなァ」

さっきの鬼舞辻議員のインタビューの方が派手だし、このニュースは扱いも地味だ。
テレビを見てたほとんどの人間は、軽く聞き流してると思う
知らない田舎の飲み水の話など、都会に住んでいる自分とは関係ないと思う奴の方がきっと多い。

あまりつっこまれたくない事は、ろくに報道しない。
しつこいくらい流す放送内容と、隠したがる内容の差がありすぎる偏向報道
昔からそんなのはあるし今に始まった事でもねぇけど、数年前から特に酷くなった。
この件も明らかにおかしい。

けれど、仮に人為的としても、何故こんな事が起こされたのかは、俺達にも全く見当がつかなかった。

 

 


会議の席で 産屋敷耀哉


「昨日連絡した通り、ここで全員集まるのはおそらく最後になると思う。ここへの入り方は皆わかっているだろうから、今日ここに集まっているメンバーの中の誰でも、これからはここを好きに使っていいよ。校長も分かっているからすぐ通してくれるし、危険がある時は知らせるからね」
「ここの存在が知られそうなのですか?」
「まだ今のところ大丈夫だけどね。組織として動くほど潰されやすい事を考えるると、個人個人が好きに動く方がいいからね。組織の潰し方を彼らは熟知しているから。大きくなった組織には工作員を送り込む。そこまで大きな組織でなくても、まとまって同じ動きをすれば読まれやすい」

皆んなの顔を見ながら話すと、ほとんどの子は私の言う意味を理解してくれたと思う。
「今日、午後のニュースでもやっていた井戸水の食中毒事件は知っているかな?」
知らないという子が半分以上居たので、私は簡単に内容を話した。
「ひぃぃ!!井戸水って怖い」
「井戸水如きで人が死ぬのか普通?!」
「俺もおかしいと思うよ」
一番若い子達は、それぞれに賑やかに反応している。

「気付いてる子はいると思うけど、あの事件は人為的なものだからね。あの村は、今の世の中の流れや政府の意向に逆らって、自分達でコミュニティを作って暮らそうとした数百人が移住していってる所だったから。支配層の側の計画を、SNSやブログ、動画を通じて強く批判もしていた。彼らからしたら邪魔な存在だったのだろうね」
「井戸水に何か入れられたという事ですか?」
「おそらくそうだろうね。杏寿郎。工作員を送り込んで、毒物を入れさせた可能性が大きい。数百人規模の組織になって常に新しいメンバーの参加があれば、工作員が紛れ込んでも分からないことが多いから」

「たしかに人数が多いと、知らない人間が誰か混ざっていても分からないですね」
「そういう事もあり得るって事は・・・こっちも集団になって目立ってくると危険だなァ」
「毒を入れるとは・・・やる事がえげつないな」
「人の脳をハッキングしたり自殺させたりする奴らだから。そういう事普通にやるでしょ」

「理事長は、どこの情報からそれが分かったのですか?」
「他の事もですけど、本当にいつも全部知っていらっしゃるようで、教えられた通りに行ってみればその通りですし・・・」

皆んなも不思議に思っているようだからそろそろ言ってもいいかな。


「信じても信じなくてもいいけどね。私はある存在からメッセージを受け取っている。人間とは違う、肉体を持たない存在だけれど」
「幽霊ですか?!」
「それとは違うよ。地球以外にも生命体は存在するし、人間のように皆が肉体を持っているわけではないからね。その存在から、今までも色々なメッセージをもらった。だからここまで来れたんだけどね」
「前世からですか?!」
「前世は直感的に色々なことが分かったけれど、それとはまた違う。この存在に出会ったのは、今世の私として生まれてから後だよ。そして、彼らの側の頂点に居るのも、同じように肉体を持たない存在だからね」

「なんか怖すぎるんですけどぉ!!そんなのに対抗して勝ち目あるんですかぁ?!」
「最初から弱気でどうするんだよ善逸。そう言ってて戦い出したら強いからいいんだけど。理事長。どんな存在でも無敵ではないですよね。大正時代だって皆の力で鬼のいない世の中に出来たのですし、きっと何か方法があるはずですよね」
「そうだね。炭治郎。彼らだって無敵ではないよ。肉体を持たない存在は、直接的に攻撃してくる事はしないからね。彼らのやり方を魅力的に感じて、自分も権力を欲しいと願う人間の思考を上手く操作して、自分達の都合のいいように動かす。それが彼らのやり方だから。実行するのはあくまでも私達と同じ人間。それに、彼らの側の人間はとても少ない人数だからね。大多数の人間が、彼らに背を向けて離れていけば彼らは何も出来ない」
「そうなると中心はやはり情報の拡散ですか?この前の事件のことも表では全然報道されないし、無かった事にされてましたけどそういうこととか・・・」
「そうだね。私達が組織になって目立つ動きをすれば彼らは潰しにくるから、一人一人が勝手に考えてバラバラにやればいいと思う。個人の情報発信者でも影響力のある者は消されているから、このやり方でも危険が無いとは言えないけれど」
「危険は承知です。今も続けている発信を、今まで通りやっていきます」
「頼もしいね。私も発信を続けているから、それをやっていこうと思うよ」
皆んなそれぞれが、やる事を決めている表情だ。
皆がバラバラに発信して、それが周りにも共振していくはず。
今でもそれはもう始まっている。

彼らの支配する世界など作らせない。

皆の力で、必ず、流れが変わる。