大人のヲタ活記録日記

年季の入ったオタクのブログ。オタ活を楽しむ日常の事、一次創作、二次創作イラストの保存、漫画の感想など。

①二次創作小説書き始めました

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実在する団体や事件とは一切関係ないフィクションです。
原作とも一切関係ない個人の書いた文章です。
二次創作が盛んなネット上のプラットフォームとか、
同人誌として作って出すような種類の小説です。
(実際そういう所にも他のブログにも出しますが)
一昔前は、個人サイトで二次創作作品を上げるのも
一般的だったのでその頃に習っやってみます。
検索除けはどこまでやろうかと迷って、
とりあえずハッシュタグ無しだけで行きます。
(公式以外のカップリングは出てこないし恋愛系の
話でもないので、そういう意味で不快になられる事は
無いと判断しました)

知っている人が多くて私も大好きな、鬼滅の刃
登場人物が出る話で、
鬼滅の刃のスピンオフの、キメツ学園の二次創作
(登場人物、設定だけ借りて好きに話を書く)です。
名前無しのモブは多数出ます。

私は原作が大好きです。
何が一番好きかと言うと、
不老不死で強靭な肉体を持つ鬼(元は人間)と
限られた命の長さしかなく怪我もすぐには治らない
普通の肉体を持つ人間。
その対比が何度も何度も描かれるところが好きです。


不老不死にあこがれる人はいつの時代にもいます。
今も、自分の代わりにアバターを使って
普通の肉体ではできない事をやったり、
何なら肉体を捨てて脳さえあれば仮想空間で
楽しく生きられるとか・・・
そういう方向へ行く動きもあります。
それが素敵だという考えもそれはそれでありなのかも
しれないけど、私は嫌いです。
その事を何かで書けないか表現できないかと思って、
書き始めました。


設定と登場人物について

転生現パロ

主な登場人物は全員記憶あり

前世お館様の学園理事長と
前世鬼殺隊の柱だった教師陣が中心
他の登場人物は
今は生徒で前世鬼殺隊士だった三人と、
柱だった二人。
前世は柱だった女子大生。
中心となる登場人物の家族。
鬼側のキャラが、
スピンオフ、原作設定範囲で
敵キャラ(人間)として
出ることがあります。
嫌な方はお気を付けください。


どの章も一人称で書いていて、
誰視点かを章タイトルに入れています


※基本キメ学軸での設定そのまま+捏造

産屋敷燿哉(理事長)
産屋敷あまね(校長)

教師6名
(緑色が前世鬼殺隊柱、青が鬼殺隊士)
悲鳴嶼行冥
宇髄天元
煉獄杏寿郎
不死川実弥
冨岡義勇
伊黒小芭内


竈門炭治郎(高校生)
甘露寺蜜璃(美大生)
胡蝶しのぶ(高校生)
時透無一郎(中学生)

我妻善逸(高校生)
嘴平伊之助(高校生)


宇髄 弟(飲食店経営者)

鬼舞辻無惨(政治家)
黒死牟(議員秘書

 

ここから小説第1話です

物語のスタート 2024年初夏


ある日の出来事 煉獄杏寿郎

 

救急車の音が聞こえて、何やら人だかりがしている。

まだ早朝の、普段なら人もそんなに多くない時間帯。

勤務先のキメツ学園から遠くない場所で、朝から一体何事だろうと思いながら、人だかりを横目で見て通り過ぎた。

 


今日は剣道部の朝練があって、熱心な生徒の中にはおそらくもう来ている者もいると思う。

早く行って鍵を開け、練習を開始させてやらないといけない。

俺は剣道部の顧問ではないが、父が剣道場を開いていて俺もそこで教えている関係で、学校の部活の方も時々手伝っている。

 


昨日寝るのが遅かったせいか、今日起きたのはギリギリの時間だった。

朝食を家で食べる時間も無く、職場に着いてから食べようと竈門ベーカリーに寄ってパンを買った。

この店は朝早くから営業してくれているし、通勤で通る道にあるから寄りやすくて助かっている。

「煉獄先生。おはようございます。いつもありがとうございます」

「おはよう!竈門少年!朝早くから頑張っているのだな!」

 


俺が行くと、けっこうな量をいつも買うので覚えてくれていて、通常の物より大きめのトレイを手渡してくれる。

自分の朝食用のサンドイッチとコロッケロール、サツマイモ入りのパンを買って、あとは朝練に来ている生徒達への差し入れに菓子パンや惣菜パンを十個ほど買う。もし余ったら昼に自分が食べればいい。

 


「そういえばさっきこの近くで、救急車が来て人だかりがしていたが。何かあったのだろうか」

パンを選びながら、さっきの出来事を思い出したので聞いてみる。

「そうなんですか?救急車の音はたしかに聞こえてましたね。近くで止まったなと思いながら仕事中だったから俺も見てなくて・・・そういえばその前に何かぶつかるような音がしたから事故かもしれないですね」

「事故か・・・大事ないといいが。教えてくれてありがとう。また後で学校で会おう」

「ありがとうございました」

 


さっきのはきっと交通事故だったのだな・・・そんなことを考えながら、パンの袋を抱えて少し早足で職場へ向かう。

今日は一限目には授業は無いから、朝練が終わったら二限目からの授業の用意をして・・・放課後は理事長のところへ呼ばれているから、終わったらすぐに向かおう。

連絡があったのは昨日だから今朝の事故の事は関係ないと思うが、他にも何かあったのかもしれない

 

ある日の出来事 宇髄天元

 

目覚ましの音が遠くで聞こえる。

まだ頭が覚醒しないまま、枕元に手を伸ばして手探りで音を止めた。

昨夜は眠くなるまで絵を仕上げて、その後ベッドに入ってスマホを見ているうちに寝落ちしてしまった。

 


メールをチェックすると、昨日の夜八時に理事長からの連絡。

これは来た時すぐに確認、返信していて、それ以降は大事なメールは無い。

夜の間にたまった迷惑メールをゴミ箱に移動させながら、今日の予定を確認する。

 


今日は午前中には授業は無い。職場に行ったらまず最初に、生徒からの提出物の絵を確認しないといけない。

午後からは授業が詰まっているし、放課後は理事長に呼ばれている。

 


冷たい水で顔を洗い、濃いめのコーヒーを淹れて飲んでいると少しずつ頭がスッキリしてきた。

理事長に呼ばれるのは一ヶ月ぶりだ。

また何かあったのでなければいいけど・・・。

 

 

 

今日は朝から空がどんよりと曇っていて、今にも雨が降り出しそうだ。

一応折り畳み傘を持って行くけれど、出すのも面倒だから降らないうちに早く職場に着きたい。

 


急いで職場に向かう途中の道で、いつもと雰囲気が違うのを感じた。

パトカーが止まっていて何やら不穏な様子。事故か犯罪か何かあったのか?

通り過ぎる時にチラッと見て行く奴、立ち止まって見物してる暇そうな奴もいる。

 


その輪の外に若い男が一人立っている。

年齢は俺よりいくらか若いぐらいか・・・まだ学生かもしれない。

あの感じ。やっぱりそうか。また見ちまった。朝から。

自分が死んだって分かってないのね。多分。

俺は知らないからこっち来ないでよ。早く成仏してくれ。

 


俺は、見なかった事にして通り過ぎた。

人間は死んですぐは、自分が死んだと気が付かない事が多いらしい。

まだ生きてるつもりでいるから、そこらをウロウロしている。

これは考えようによっては、どんな酷い死に方しても完全に死んだあとは、それくらい痛くも苦しくもないって事だから喜ばしい事なんだろうけど。

 


なぜか今世では、そういう奴の姿が時々見えてしまう。

子供の頃は、そういう奴に普通に話しかけたりして周りから気味悪がられた事もあった。

そういう事もあっていつからか、見えてても人には言わない事にしている。

 

 

 

今日の会合の事 伊黒小芭内

 

楽しみにしていた予定だが、こればかりは仕方ない。

理事長からも「皆んなも予定があるだろうに急に呼び出してすまないね」

という丁寧な文章でメールが送られてきている。

理事長の立場なら強制する事も出来るし、俺はそれでも普通に行くと思うけれど。

こういう丁寧さ。あの方はやはり前世から変わらない。

 


前世では共に鬼殺隊の柱だった甘露寺には、今日会えなくなった理由を隠さなくていいからそのまま伝えた。

甘露寺にだけは嘘を吐きたくないし、正直に言えるのは助かる。

職員でもない甘露寺が一緒に参加するわけにはいかないが、帰ったら内容はまた話すという事も伝えた。

「何かあったのでなければいいけど。気をつけてね」と返信が来た。

早く会いたい。

 


呼び出しがかかるということは、また何か問題が起きたには違いないだろうが・・・大事でないことを祈るしかない。

今日の仕事の段取りを考えながら机の上を整理していると、またラインの通知が来た。

「もし早く終わったらうちに来てくれたら嬉しいな♡今日のお話聞きながら一緒に晩ご飯食べたいから。伊黒さんの好きな物作るからもし良かったら来てね。遅くなった時は気にしないでね。自分で沢山食べるから平気」

文章に続けて、料理をしている可愛らしいスタンプが送られてきた。

あまりに嬉しすぎて、今の表情はきっと緩みっぱなしだ。

ニヤニヤが止まらないまま、ぜひ行きたいと返す。

「なんかいい事あったのかァ?」

マスクでも表情は隠せていなかったのか、向かいの席の不死川が聞いてきた。

「女神からラインが来たんだ」

 

 

その日の昼休み 冨岡義勇

 

 

「またそこでパン食ってんのかァ」

「・・・・」

「もうちょっと栄養あるもん食えよォ」

「・・・俺は食べながら話せない」

 


ちょうど食べ終わったから良かったが、不死川が隣に座って話しかけてきた。

食べている時は話せないが、来てくれるのは嬉しい。

 


今日の放課後は、理事長からの呼び出しがかかっている。

連絡があったのは昨日の夜だった。

「俺は今日残業ねぇからすぐ行けそうだけどォ。お前定時で終われそうなのかァ?」

「俺も大丈夫だ」

「忘れずに来いよォ」

不死川が、俺の頭をワシャワシャと撫でてから去って行った。

 


不死川とは大学から一緒だし年も同じだが、いつも何となく兄のような感じがする。

怖いと思われている外面と違って、本当は面倒見が良く優しいところがある。

不死川は兄弟の一番上で常に兄の立場、俺は上に姉が居て年下の兄弟が居ない弟の立場だから、自然とこんな感じになるのかもしれない。

生徒達から外面が怖いと思われているのは、俺も不死川と同じだと思う。

 


理事長から呼び出されるのは、たしか一ヵ月ぶりくらいだったかと思う。

また何かあったのか、それとも何か分かって進展があったのか・・・

 

その日の昼休み 煉獄杏寿郎

 

「今朝人だかりがしていてたのはこの事だったのか」

今ニュースを見てやっと分かった。

「お前見たの?」

隣の席の宇髄が話しかけてくる。

「現場を見たわけではないが救急車が来ていて人だかりがしていたのは知っている。竈門ベーカリーに寄った時聞いたのだが、何かぶつかるような音がしたと言っていたから俺はてっきり交通事故かと思っていた」

「まあそれに近い音するでしょうね」

 


今朝竈門少年が言っていた「何かぶつかるような音」というのは、人が上から飛び降りて下の道路に叩きつけられた時の音だったに違いない。

 


マンションからの飛び降り自殺があったというニュースを、職員室に置いてあるテレビが伝えている。

通常自殺はニュースにはならないが、朝の通勤ラッシュの時間帯で騒ぎになったという事と、近年若者の自殺が増えているという事と重ねて報道されていた。

飛び降りたのは二十代半ばの、若い会社員の男性。

俺達と年の違わない若者の自殺。

何があったのか知らないが、他人事とは思えない。

自ら命を絶とうと思ってしまうほどの理由とは一体何なのか。

 


2021年から始まって過去三年ほど、自殺者の数は増えるばかりで、特に若者の自殺が増えているという事もニュースで伝えられている。

2020年からの流行り病の影響で日本の経済も大打撃を受け、会社の倒産、それに伴う失業者の増加、収入の減少、就職困難などが問題になっている。

自殺者が増えるのは、経済的困窮などが原因になっている事が多いと思う。

けれどニュースの続きを聞いていると、この若者に関してはどうもそういうことでもないらしい。

原因は不明。

健康で普通に生活し仕事もしていた若者が、特にこれといった理由もないのに、そう簡単に死にたくなったりするものだろうか。

 


「理事長の今日の用事ってこれと関係あんのかもね」

宇髄が少し声を落として、俺にだけ聞こえるように言った。

 

 

隠し部屋での会議 産屋敷耀哉

 


普段は校長室として使っている部屋を、集合場所の入り口にしたのは間違っていなかったと思う。

皆が一番集まりやすい。

私も人目につくことなく裏から出入り出来る。

 


ここに皆に集まってもらうたびに、前世の柱合会議を思い出してしまう。

鬼のいなくなった世界に生まれて、今世では何事もなく平和に過ごせるものと思っていたのだが・・・

一見平和に見える表面に隠されたものを暴いていくのが、今世での私とあの子達の役割なら、ただそれをやるだけだけの事。

 


「遅れるという事は聞いていないので、もうすぐ全員来ると思います」 

「いつもすまないね。行冥。今回は皆にも急に呼び出して悪かったね」

「事が起きた時は早めに対処した方がいいですから。皆も分かっていると思います」

 


ここに通じる扉は隠し扉になっていて、ごく限られた者しかこの場所を知らない。

校長である私の妻と、今はこの学校で教師をしている前世では鬼殺隊の柱だった者達六人。

ここでの会合の内容を知るのは、この六人に加えて今は学生である元鬼殺隊の柱だった三人。

たとえ身内に対してでも、この部屋の存在やここでの話の内容はは絶対の秘密にしてもらっている。

 


六畳一間の部屋で、板の間に丸テーブルと椅子を置いただけの簡素なものだが、防音だけはしっかりしてる。

ここでなら何を話しても誰かに聞かれる心配も無いし、盗聴器が無い事も常に確認している。

部屋にごちゃごちゃ物を置かないようにしているのも、誰かが盗聴器を仕掛けられるような場所を作らないためでもある。

 


隠し部屋での会議 煉獄杏寿郎

 

入る時はノックして「失礼します」と声をかけ、名前を告げて入る。

校長が迎え入れてくれて、奥の扉へ進む。

六人全員が入るまで、そして全員が退出するまで、他の者が入ってくる事が無いか見張っている役目もあって校長がずっと居てくれる。

校長室自体、アポ無しで突然人が来ることはまず無いけれど「用心に越したことは無い」という事らしい。

 


扉を開けた奥にある部屋は、壁一面に本棚が並んでいる以外何もなくて、一見普通の資料室に見える。

奥の本棚の一番下の段から本を一冊抜き取って、その奥にあるボタンを押す。

このボタンも本棚と同色の目立たないもので、知っていなければそこにあると分かる者は居ないと思う。

これで本棚が動くので、少し力を入れて本棚の端を押すと、回転扉になっていて向こう側に開く。

俺が入ろうとしているところにちょうど、冨岡と不死川が来たから一緒に入った。

悲鳴嶼さんと宇髄はすでに来ていて、理事長と三人で座って話している。

俺達が入ったすぐ後に、伊黒が到着して全員揃った。

 

 

 

やはり、今朝の事件は何か関連性があると理事長は見ているらしい。

マンションから飛び降りて死んだ若い男性は、東京に出てきて数年の一人暮らしで、普通に会社に行っていて友達も多く、特に何かに悩んでいる様子は無かったという。

自分で飛び降りて死んだのだから自殺ということになるが、遺書も無かったらしい。

「突き落とされたという可能性はないのだろうか」

皆の前で、俺の思ったことを言ってみる。

「飛び降りるところが目撃されているから、それはおそらく無いね」

理事長は、すでにいくつか情報を持っていた。

「今朝あれから、皆が学校で頑張っている間に私は調べられるだけ調べてみたのだけどね。特に自ら命を経つような理由も無い若者が、突然飛び降りて死んだということだ」

 

 

 

「ついこの前の車の事故も相当不自然だったけど、もしかしたら全部繋がってて何か裏があるって事でしょ」

「確かにここ数年多すぎるな」

「けど死んだ人間同士は何の関連性も無いんだろォ」

「人間関係としては繋がりは無いな」

「他にも、突然刃物を振り回して暴れた若者の事件もある。幸い死者は出なかったが怪我人が多く出た」

「駅近くで起きたあの事件ね。たしか先月か・・・そんなに前じゃなかったような」

「人が突然自殺に走るだけじゃなくて、他人を傷つけることも起きているということか・・・」

 


「皆が来る前に理事長と話していたのだが、裏で鬼舞辻議員が動きだしたかもしれない。その上にもさらに大きな組織がある」

悲鳴嶼さんが話し始めた。

「死んだ者、事件を起こした者の間に人間関係は無いが、何か他に共通点があるのではないかと思う。言える事は、普段の自分の意思とは関係ない何かの働きかけによって突然そういった行動に出たという事だ」

「いきなりビルから飛び降りたり、包丁持って暴れたり、その前はたしか運転中突然暴走して民家の壁に激突したってやつでしょ」

宇髄が過去の事件の事を並べて言った。俺もそれは記憶にあって、どれもごく最近のことだ。

 


「脳をハッキングされると言えば近いかもしれない」

「そんな事が・・・」

「ずっと調べてきたが、それ以外考えられない」

 


「そうだとすれば、これからもこういう事件は起きると・・・」

俺の隣に座っている伊黒が言った。

「起きた事件を調べて共通点を探すしかないね。どうやってその行動を取らせているか。何の目的があるか」

「ある意味、あの頃より厄介かもしれませんね」

 


「あの頃」というのは前世を意味している。

鬼殺隊の柱だった九人は、全員その記憶を持っている。

今は理事長のお館様も、校長のあまね様も。

 


「普通の人間が鬼に変えられて他の人を襲うという事件と、今起きているこの事はある意味共通点があると思います」

「どういう事かな。杏寿郎」

「脳をハッキングされた人間が自我を失うというのは、鬼にされた人が人間だった頃の記憶を失うのと同じではないかと」

「確かにその点に於いては同じだと言えるね。違うのは被害の広がり方なんだ。鬼にされた人間が直接他の人を襲う場合は、襲われた人の中からまた誰か鬼になる人間が出てくる。けれど今の状況は、被害者が突然出て、どんな方法でどう増えているのかわからないんだ」 

言われてみればその通りで、そこが一番厄介なところだと思う。

原因が分からなければ対処のしようが無い。

 


「頂点に居て鬼を操っている者が居たのと同じように、今回も首謀者というのは必ず居るはずですよね。そこを突き止めれば・・・」

さっきまで黙って考えていた不死川が、理事長に向かって話し始めた。

「相手は鬼でもなく普通の人間という事は、前のように刀を振るって狩って回るわけにはいかないですし、首謀者を突き止めて捕まえるのが一番いい方法ではないかと」

「それが出来れば理想的だね。今のところ、鬼舞辻議員が何か関わっているらしい事は見えてきているが、まだ確実な証拠も無いし、彼がトップでもないと思う」

「さらに上の組織なり存在が居るという事でしょうか」

「まだその正体は分からないけれど。そういう存在が居る事はほぼ間違いないと思う。

 

 

 

 

隠し部屋での話し合いはニ時間程度で終わって、時刻は夕方の六時を回ったところ。

職場からの帰り道、俺は宇髄と一緒に近くの定食屋に寄った。

昼休みにパンを食べて以降何も食べていない。

空腹は限界だった。

とりあえず今日のサービスのトンカツ定食の大盛りを頼み、完食したところでやっと落ち着いた。

宇髄は、同じ定食を普通サイズのご飯でゆっくり食べている

「腹が落ち着いた?まだ足りないでしょ」

「うむ。食券を買ってくるからそれから話そう。少しだけ待ってくれ」

「ゆっくり買っといで」

宇髄はいつも俺のペースを分かってくれるし、俺が食べ終わるまでゆっくり待ってくれる。

とりあえず唐揚げ定食大盛りと、丼物を三つほど食べれば足りると思う。

 


「お前が食い終わったら公園かどっかで話す?」

「俺は別にここでもかまわないが!」

「お前の声でかいから」

「そうだな!それはすまない!小さい声で話そうとするのだが。どうしても途中で忘れてしまう事がある」

話そうとしている内容が内容だけに、周りに丸聞こえでは困るというのも分かる。

 


公園では子供達が遊んでいる賑やかな声がしていて、すぐ近くの道路から車の走る音も聞こえている。

この中でなら、多少大きな声で話してもちょうど良くかき消されるから大丈夫そうだ。

「俺達のやる事は今のところ特になさそうだな」

「そうね。まずは何処があやしいか、誰があやしいか目星つけてもらわないと」

「パソコンを使っての作業は俺はさっぱり分からないからな」

「俺も多分お前よりちょっとマシな程度だわ。まあそういう作業ばっかでもないだろうけど。どっちかって言うと、表のニュース見て繋げてその裏を推理していくのが中心でしょ」

「うむ。それならまだ出来なくはないようにも思えるが。どちらにしろ前のように武力や体力仕事ではないという事だな」

「時代が違うからね」

「時代は違っても良からぬ事を考える連中がいるのは変わらないのだな」

「それだけはいつの時代でもそうでしょ。そん中で悪事の傾向も変わってきてる。多分昔よりめんどくせぇ」

 


宇髄の言う事はその通りだと思う。

任務の連絡が入れば現場へ行って刀を振るった前世は、日々の鍛錬と戦いが全てだった。

今度は、それとはかなり違った戦い方になるのだと思う。

「前とは違うし慣れない事ばかりだ。前も俺よりずっと長く生きて今世でも先輩の、君の足を引っ張っらないよう心がける。よろしく頼む」

「そう固いこと言わないでよ。俺もお前に助けられた事はあるし頼りにしてっから」

その言葉の後に差し出たれた宇髄の右手を、俺はしっかり握り返した。

 


この事は、前世鬼殺隊の柱だった九人全員が知っている。

時透と胡蝶は今世まだ学生だけれど、教師の立場より学生の立場の方が動きやすい場合や入り込みやすい場所もある。

生徒の立場で校長室に度々来るところなど見つかると不審に思われるので、学校での会合には今のところ呼んでいないけれど。

それでも話し合った内容は全て二人にも伝えている。

美大生の甘露寺には、伊黒から話が伝わっている。

 


昨日の話し合いで、常の行動は二人ずつ組んで、定期的に全員で集まる事になった。

理事長と悲鳴嶼さんが司令塔、生徒の立場の時透と胡蝶、伊黒と甘露寺、不死川と冨岡、俺は宇髄と、これから相棒として行動を共にすることになる。

前世でも一番接点が多かったし、今世では大学の時から友人である宇髄なら、気心が知れていて話しやすい。

「俺達で話す時は、直接会った方がいいように思う」

「俺も同感。情報なんてどこから抜かれてるかわかんないしね」

スマホでの会話やラインの文字に残す会話なども安心は出来ない。俺も君も、そういったことに強い方ではないから尚更だ。防ぐ方法に詳しくないなら、最初から危険は避けるのが確実だ」

「お前んとこは家族居るから基本俺の部屋で話す?けど盗聴器付けられない保証はないか・・・」

「外が一番マシかもしれないな」

「そぉね。同じ場所じゃない方がかえっていいかも」

 


今までの状況を振り返って考えたり、これからの事などを話し合っているうちに、いつのまにか辺りはすっかり暗くなり夜の景色に変わっていた。

この時間になると公園にはもう人は居ない。

 


会話が途切れた時、しばらく何か考えている様子だった宇髄が、突然俺の目を真っ直ぐに見て言った。

「煉獄。一つだけ約束してくれ。無茶すんなよ」

「場合によっては危険に晒されるのは、君も同じだろう」

「・・・考えないようにしようと思っても前世の事がチラついてね。お前は自分の命より、他人の命を優先する。それはたしかに立派な生き方かもしれねぇけど俺は、お前に死んで欲しくない」

「君が俺を心配して、そう言ってくれるのは嬉しい。俺はたしかに誰かを守るためには自分の命を惜しまないかもしれないし、もし長く生きられなくてもそれを後悔することはないと思う。しかし、俺は別に生き急いでいるわけではない。前世では、他の人達の命を守った結果として俺の命は終わった。他の人を守り、自分も生き残れるなら無論そうするが、強すぎた敵の前で力及ばなかった。それだけの事だ。それに・・・前世で早く死んだからといって今世でも必ずそうなるとは限らない。何よりも今は、前世で鬼殺隊の柱だった君と一緒に行動できる。あの時は、柱は俺一人だったからな。今日、君が俺を頼りにしていると言ってくれたのも嬉しかった。俺も同じように君を頼りにしている。あらためてよろしく頼む。宇髄」

「派手に任しといて」

俺達は、拳を合わせて笑い合った。

宇髄が居てくれるなら、俺はきっと大丈夫だ。